皆さんは「住民税の特別徴収」と言われて、ご説明することができるでしょうか?ほとんどの企業に義務として課されている特別徴収は、意外と様々な手続きが必要です。特別徴収に必要なこと、気を付けるべき点についてご説明します。
【目次】
給与計算を行う際に気を付けるべき税金ですが、結論から申し上げると「所得税」「住民税」の二つとなります。給与計算時に何を気を付けなければいけないのか、以下でご説明します。
所得税とは、「個人のその年1年間の所得に対して課される国税」です。所得税は、所得金額が高くなればそれに応じて税率も高くなる「累進課税」が採用されており、所得金額の区分に応じて5~45%の間で税率が変化します。また、所得税は翌年2月16日から3月15日までの期間に一括納付する必要があります。
給与や報酬などを支払う企業・官公庁・個人などには一部例外を除き、所得税の「源泉徴収」を行い、国に源泉徴収を納付することが義務付けられています。そのため、給与計算を行う際には源泉徴収額を計算し、給与から差し引いた額を支給する必要があります。また、源泉徴収した所得税は、対象となる給与が発生した月の翌月10日までに源泉徴収義務者が税務署に支払う必要があります。その後、年末調整によって税額を確定し、確定申告されます。
従業員に対して給与を支払う経営者は源泉徴収の義務がありますので注意が必要です。
住民税とは「個人の前年1年間の所得に対して課される地方税」です。住民税は、「均等割」「所得割」の二つに分けて計算されます。「均等割」とは、所得の額に関わらず一定額を納める税金のことです。市民税や災害時の復興に充てるための税金、水源の維持のための超過課税などがこれにあたります。一方、「所得割」とは前年1~12月の所得から計算されるものであり、税率は累進課税を採用している所得税とは異なり、一律10%です。
また、住民税は所得税とは異なり、納税時期が異なります。住民税は前年1~12月の所得に課税され、翌年6月から一括または年4回の分割で納める必要があります。年4回の分割で納める場合、第1期が6月末、第2期が8月末、第3期が10月末、第4期翌年1月末が納付期限になっています。そして、この住民税の納付には「普通徴収」「特別徴収」の2種類の方法があります。「普通徴収」とは、「従業員が個々人で納付書などで支払い手続きを行う方法」であり、年間の住民税が4回分の納付書となって個人に送付されます。一方、企業における給与計算に関わってくるのは「特別徴収」です。「特別徴収」とは、「企業が従業員の給料から天引きし、従業員の代わりに企業が納付する方法」です。住民税の納付時には年一括払いなのか年4回払いなのか、普通徴収なのか特別徴収なのかを判断する必要があります。
また、重要な点ですが、所得税の源泉徴収を行うことが義務付けられている事業所には、同時に住民税の特別徴収の義務も課せられています。そのため、個人事業主やフリーランスでない限りは特別徴収の対象者になります。
では、具体的に特別徴収を行う際にはどのような手順で進めればいいのか、次章で詳しく説明します。
特別徴収を行う際の手順は次の通りです。
特別徴収を行う際、まず行うべきは前年の給与支払額を1月31日までに市町村に届け出ることです。市町村は1月1日時点の住所で、届け出された給与の所得をもとに住民税額を計算し、当年6月から翌年5月まで毎月納付する住民税の額を「特別徴収税額通知書」にて企業に通知します。企業は、通知された住民税額を給与支払額から控除し、納付することになります。
「特別徴収税額通知書」の内容に何らかの変更が生じる場合、具体的には従業員に入社・退職・異動などがあった場合、企業は対応を行う必要があります。
従業員が入社した場合、新卒であれば普通徴収から特別徴収に切り替える「特別徴収切替届出(依頼)書」、中途であれば「給与支払報告特別徴収に係る給与所得者異動届出書(通称:異動届出書)」を市町村へ提出する必要があります。もし、いずれの届出書も提出しなかった場合、従業員が自ら住民税を納付する普通徴収のままになります。
普通徴収から特別徴収への切り替えのタイミングですが、実務上は多くの手間が発生するため、入社した年は普通徴収、翌年から特別徴収にしている企業が多いです。
従業員に退職・転職が発生した時、また転勤が発生した場合には企業は手続きが必要です。必要な手続きは以下のようになっています。
特別徴収税額が確定されると、納付に移ります。
【納付の時期】
特別徴収では翌月10日までに納付を行う必要があります。ただし、特例で特別徴収する従業員が常時10人未満の企業に限り、市町村長に対して申請を行えば6~11月分を12月10日、12~5月分を6月10日と年2回の納付に変更することができます。納付の回数が減ればその分企業の負担も減りますので、もし上記条件に当てはまる企業がいらっしゃれば検討されてもいいかもしれません。
【納付の方法】
納付の方法は複数用意されており、企業で選択することができます。自社の状況を考慮し、適切な方法を選びましょう。
・納入書による納付(特別徴収税額通知書に同封されて郵送されてきます)
・eLTAXの地方税共通納税システム
・銀行のオンライン(地方税納入サービスや総合振込によるデータ送信など)
ここまで特別徴収についてご説明してきました。では、特別徴収を行う際には何に注意すればいいのでしょうか?以下3点の場合についてご説明します。
住民税は、退職金にも課税されます。ただし、通常の特別徴収は1年遅れで納付しますが、退職金に関しては企業が退職金を支払う際に住民税を控除し、納付するルールになっています。退職金を支給する際に、そのルールを説明しておくことでトラブルが起きにくくなりますので、支給の際に一言沿えるのもいいかもしれません。
事務所の移転や社名を変更した場合、「特別徴収義務者の所在地・名称変更届出書」を、特別徴収した住民税を納付している市町村単位で個別に届け出る必要があります。届出様式は市町村ごとに異なりますので、各市町村のサイトから確認し、届出を行います。
例)名古屋市の届出書はこちらから
また、合併や法人成りをした場合も同じ用紙で届出を行います。毎年年初に提出する給与支払報告書の届出住所を変更するだけでは変更内容の登録が完了しないことに注意しましょう。
企業が翌月10日に設定されている特別徴収の納付期限に遅れた場合、市町村から催促状が届き、延滞金が発生します。延滞金の額は遅滞が1か月を超えると跳ね上がりますので、納付の遅れには注意が必要です。
【延滞金の計算式】
1か月まで:延滞している納税額(千円未満切り捨て)×2.5%×期間日数/365日
1か月以上:延滞している納税額(千円未満切り捨て)×8.8%×期間日数/365日
※延滞金の率は年によって変動します。計算式は令和3年1月1日~12月31日のものです。
前章では特別徴収で注意するべきことについてご説明いたしました。特別徴収は、従業員にとっては手間が減るものですが、企業にとっては面倒な作業です。
では、どのようにすれば手間を減らすことができるのか、以下にてご説明致します。
第二章でもご説明しましたが、通常、特別徴収した住民税は毎月納付する必要があります。しかし、特別徴収する従業員が常時10人未満の企業に限り、年二回の納付になる特例があります。市町村長に対して所定の申請を行えば6~11月分を12月10日、12~5月分を6月10日と年2回の納付に変更することができます。
資源が限られる小企業は、手間を少しでも減らすことができれば、その分業績を上げる他の業務に限られた資源を投じることができます。上記条件に当てはまっている企業は、特例の活用を検討することをおすすめします。
手間を少しでも減らしたいという方は、特別徴収に関する業務を外注することを検討されてもいいでしょう。今までご説明してきた通り、特別徴収は煩雑で、また制度の変更も頻繁にあります。そのため、知らず知らずのうちに規則に反してしまっている、手間が多く、従業員に大きな負担が生じていることがあります。
専門家に煩雑な特別徴収に関する業務を任せれば、安心して本来の業務に取り組むことができます。特別徴収業務にお困りの経営者の皆様は、外注をぜひご検討されてみてはいかがでしょうか?
当社では、こうした「給与計算についてのお悩み」を解決をサポートいたします。
貴社の環境に応じて、必要なサポートを様々ご提案させていただいております。もちろんご相談内容は守秘義務により厳重に守られますので、ご安心ください。
完全無料!オンライン面談OK!まずはお気軽にご連絡ください!
また、「経理・給与計算の外注を検討しているが、どの代行を選べばいいのかわからない」とのお声から、当社ではチェックリスト付きの資料をご用意致しました。 事前に資料をご確認いただくことで、より自社での落とし込みがしやすくなるかと思いますので、ぜひご確認・ご活用ください。
株式会社
葵コンサルティング
▼名古屋オフィス
〒460-0022
愛知県名古屋市中区金山
2丁目14-15
▼知多オフィス
〒478-0065
愛知県知多市新知東町
2-24-7