「元気なうちに、子どもや孫に少しずつ財産を渡しておきたい」。 そう考える方は多いのではないでしょうか。
生前贈与は、相続を待たずに財産を渡せる方法として広く使われています。 なかでも「年110万円までなら贈与税がかからない」という話を聞いたことがある方は多いはずです。 本記事では、2026年8月時点の制度に基づいて、この基礎控除の基本と、あわせて知っておきたい注意点をやさしく整理します。
生前贈与とは、財産を持つ人が生きているうちに、子どもや孫などへ財産を渡すことをいいます。 現金や預貯金だけでなく、不動産や株式なども贈与の対象になります。
財産を受け取った人には、原則として贈与税がかかります。 ただし、一定の金額までは非課税となる仕組みが設けられており、その代表的なものが「暦年課税」の基礎控除です。
贈与税には「暦年課税」という課税方式があり、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額から、110万円の基礎控除を差し引いて税額を計算します。 つまり、1年間に受け取った財産の合計が110万円以下であれば、贈与税はかからず、原則として申告も不要です。
この110万円という基礎控除額は、財産を渡す人ごとではなく、財産を受け取る人ごとに1年間で判定します。 たとえば祖父母2人からそれぞれ100万円ずつ、合計200万円を1年間で受け取った場合は、110万円を超えた部分に贈与税がかかることになります。
ここで注意したいのが、生前贈与と相続税の関係です。 相続や遺贈などにより亡くなった方から財産を取得した人が、相続開始前の一定期間内にその方から贈与を受けていた場合、その贈与財産の価額が相続税の課税価格に加算される仕組みがあります。
この「相続開始前の贈与を相続財産に加算する期間」は、2023年度の税制改正により、2024年1月1日以後の贈与から段階的に延長されています。 具体的には、2024年1月1日から2026年12月31日までに相続が開始する場合は、これまでどおり相続開始前3年以内の贈与が加算対象です。 2027年1月1日から2030年12月31日までに相続が開始する場合は、2024年1月1日から相続開始日までの贈与が加算対象となり、完全に「相続開始前7年以内」となるのは2031年1月1日以後に開始する相続からです。 なお、相続開始前3年以内の贈与以外の部分については、その期間中に受けた贈与財産の価額の合計額から総額100万円までが加算対象から除かれます。
つまり、年110万円の基礎控除の範囲内で贈与税がかからなかった贈与であっても、相続や遺贈などにより贈与者から財産を取得した場合には、相続税の課税価格に加算されることがあります。 「贈与税がかからなかった=相続税にも一切関係ない」とは限らない点は、見落とされやすいポイントです。
生前贈与が成立するためには、財産を渡す人と受け取る人の双方が、贈与の内容を認識していることが前提になります。 たとえば、子ども名義の口座にお金を移していても、通帳や印鑑を渡す人が管理し続け、子ども自身が口座の存在を知らず、自由に管理・使用できる状態にもなっていない場合、実質的な贈与とは認められず、相続財産とみなされることがあります。
こうした状態は「名義預金」と呼ばれ、相続税の税務調査で指摘されやすい点のひとつです。 生前贈与を行う際は、贈与契約書を作成する、受け取った人自身が口座を管理するなど、贈与の事実を明確にしておくことが大切です。
暦年課税とは別に、「相続時精算課税制度」を選択する方法もあります。 2024年1月からは、この制度にも年110万円の基礎控除が新設されました。 また、2024年以後の相続時精算課税では、贈与を受けた年ごとに年110万円の基礎控除があり、この基礎控除の範囲内の金額は、原則として贈与者が亡くなった際の相続税の課税価格への加算対象にもなりません。
相続時精算課税制度は、暦年課税とは仕組みや適用要件が異なり、一度選択すると同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ戻せないなどの制約もあります。 どちらの制度を選ぶべきかは、財産の状況や贈与の目的によって判断が分かれるため、一般的な内容だけで判断せず、税理士に相談しながら検討することをおすすめします。
暦年課税による生前贈与では、1年間に受けた贈与の合計額が110万円以下であれば、原則として贈与税はかかりません。 一方で、相続開始前の贈与を相続財産に加算する期間は、2024年以後の贈与から段階的に延長されており、完全に7年間となるのは2031年1月1日以後に開始する相続からです。贈与の実態が伴っていないと税務上の贈与と認められないこともあります。 生前贈与の進め方や相続時精算課税制度との使い分けについて気になる点があれば、お気軽にご相談ください。
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