相続財産の中に土地が含まれている場合、「この土地はいくらと評価すればいいのか分からない」と戸惑う方は少なくありません。現金や預貯金と違い、土地には最初から決まった金額があるわけではなく、相続税の申告のために評価額を算出する必要があります。
土地の評価方法には主に「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があり、多くの市街地では路線価方式が使われています。本記事では路線価方式を中心に、相続税における土地評価の基本的な考え方を整理します。なお、路線価や評価倍率は毎年更新されるため、本記事は2026年8月時点で国税庁が公表している情報をもとに解説しています。実際の申告では、対象となる年分の路線価図・評価倍率表を必ず確認してください。
相続税は、亡くなった方(被相続人)が残した財産の合計額をもとに計算します。現金や預貯金は額面がそのまま評価額になりますが、土地は市場での取引価格が一定でないため、そのままでは相続税の計算に使えません。そこで国税庁は、全国の土地について毎年「路線価」または「評価倍率」という基準を公表し、これをもとに相続税評価額を算出する仕組みを設けています。
この評価額は、実際に土地を売却するときの価格(実勢価格)とは別のものです。路線価は、国が毎年公表する公示地価のおおむね8割程度を目安に設定されており、相続税・贈与税の計算専用の評価基準という位置づけになります。
相続税における土地の評価方法は、その土地がある地域によって、路線価方式と倍率方式のいずれかに分かれます。
路線価が定められている地域(路線価地域)では、道路(路線)に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価格である「路線価」をもとに評価額を算出します。路線価方式と倍率方式のどちらを使用するかは、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で対象となる土地の所在地を確認して判断します。
路線価が定められていない地域(倍率地域)では、その土地の固定資産税評価額に、国税庁が地域ごとに定める一定の倍率を掛けて評価額を算出します。郊外の住宅地や農地・山林が多い地域など、路線価が設定されていない場所で用いられる方法です。
路線価地域にある宅地の評価額は、次のような流れで算出します。
路線価は、国税庁が公開している「財産評価基準書」のページから、都道府県・年分を選択し、対象の土地が面する道路の路線価を確認できます。路線価は毎年1月1日を評価時点として定められ、国税庁から公表されます。2026年分(令和8年分)の路線価図等は、2026年7月1日に公開されています。
路線価は「標準的な形状の宅地」を前提に設定されているため、実際の土地の形状(奥行きの長さ、間口の狭さ、不整形かどうか、角地かどうかなど)に応じて、奥行価格補正率などの補正率(画地調整率)を掛け合わせ、1平方メートルあたりの価額を調整します。
補正後の1平方メートルあたりの価額に、その土地の地積(面積)を掛けると、その土地の相続税評価額が算出されます。以下は考え方を理解するための設例であり、実際の相談事例や税額を示すものではありません。
例えば、路線価が1平方メートルあたり20万円、奥行価格補正率が1.00(補正なし)、地積が150平方メートルの整形地であれば、「20万円 × 1.00 × 150平方メートル = 3,000万円」という考え方になります。実際には土地の形状や接する道路の数などによって補正率が変わるため、この設例どおりの金額になるとは限りません。
倍率地域にある土地は、次の式で評価額を算出します。
評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
固定資産税評価額は、毎年市区町村から送付される固定資産税の課税明細書等で確認できます。倍率は路線価と同じく、国税庁の財産評価基準書のページで、対象の年分・地域ごとに公表されています。
次のようなケースでは、評価額の算出が複雑になりやすく、注意が必要です。
これらのケースでは、路線価に掛け合わせる補正率の組み合わせや、貸主・借主それぞれの権利をどう評価に反映するかなど、判断が分かれる要素が増えます。一般的な考え方はあっても、最終的な評価額は個々の土地の状況によって変わるため、断定的に判断せず、税理士等の専門家に確認しながら進めることをおすすめします。
標準的な形状の宅地で、路線価と地積が明確であれば、評価額の大まかな目安を自分で計算することも可能です。ただし、実際の相続税申告では、次のような点も含めて総合的に判断する必要があります。
特に小規模宅地等の特例のように、要件を満たせば評価額を大きく軽減できる制度もありますが、適用には細かい要件があり、判断を誤ると適用できなくなる場合もあります。評価額の計算に少しでも不安がある場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
相続税における土地の評価は、路線価方式と倍率方式のいずれかで算出しますが、実際には土地の形状や権利関係によって補正の考え方が変わり、単純な計算だけでは終わらないケースも少なくありません。相続財産に土地が含まれている場合は、まず対象の土地がどちらの方式に該当するのかを確認するところから始めてみてください。
土地の評価を含めた相続税申告について気になる点があれば、お気軽にご相談ください。
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