「今年もまた最低賃金が上がるらしいけれど、うちの給与は大丈夫だろうか」。愛知県内で従業員を雇う経営者や給与担当者の中には、そう感じている方も多いのではないでしょうか。
愛知地方最低賃金審議会は2026年8月5日、愛知労働局長に対し、現行の愛知県最低賃金(時間額1,140円)を55円引き上げ、時間額1,195円に改正する旨の答申を行いました。引上率は4.82%です。
今回の答申を受けて、愛知労働局長は異議申出などの所要の手続きを行ったうえで、2026年10月1日からの効力発生を予定しています。正式決定の官報告示は、この手続きを経てから行われます。
現行の最低賃金1,140円は2025年10月18日から効力を持っています。今回の答申どおりに改正が決定すれば、2026年10月1日から1,195円へ切り替わる見込みです。答申段階の今の時点では、まず現行の1,140円を満たしているかを確認しつつ、10月の正式決定に備えて1,195円を前提とした試算を進めておくと安心です。
給与計算を見直す前に、そもそも最低賃金と比較する「賃金」の範囲を正しく理解しておく必要があります。最低賃金は、通常の労働時間や労働日に対応する賃金だけが比較対象になります。
次の賃金は、最低賃金額との比較から除外されます。
つまり、基本給に加えて役職手当や職務手当などの所定内賃金は比較対象に含まれますが、賞与や残業代、通勤手当などは含めずに比較する必要があります。この範囲を誤ると、実際には最低賃金を下回っているにもかかわらず「基準を満たしている」と判断してしまうおそれがあります。
時給で働くパートやアルバイトであれば、時給と最低賃金額をそのまま比較すればよいため、判断は比較的単純です。一方で、月給制の正社員は時給に換算しないと最低賃金を満たしているかどうかがわかりません。
月給制の場合、比較には次の計算式を使います。
月給額(最低賃金との比較対象となる賃金)÷1か月平均所定労働時間=時間額
1か月平均所定労働時間は、年間所定労働時間を12か月で割って求めます。年間所定労働時間は、年間所定労働日数に1日の所定労働時間を掛けて算出します。たとえば年間所定労働日数が255日、1日の所定労働時間が8時間であれば、年間所定労働時間は2,040時間、1か月平均所定労働時間は2,040時間÷12か月で170時間になります。
この場合、月給20万円の従業員であれば、20万円÷170時間で、時間額に換算すると約1,176円になります。現行の最低賃金1,140円は上回っていますが、答申どおり1,195円に改正されると下回ることになります。このように、月給の金額を変えていなくても、最低賃金の改定によって基準を割り込んでしまうケースがある点には注意が必要です。
答申が出た今の段階で、次の点を確認しておくと10月の正式決定後に慌てずに済みます。
時給・日給で働く従業員については、現在の時給が1,140円以上であるかをまず確認します。そのうえで、10月1日から1,195円を下回らないよう、改定に向けた見直しの準備を進めます。
月給制の社員については、上記の計算式で時間額に換算し、1,195円を基準にしたときに不足が出ないかを試算しておきます。基本給だけでなく各種手当についても、最低賃金との比較対象に含まれる賃金かどうかを確認したうえで計算します。
就業規則・賃金規程については、時給や初任給の表記が現行の1,140円のまま更新されていないかを確認します。
求人票については、求人票に記載する賃金が、改定後の最低賃金を下回らないか確認します。
給与計算ソフトについては、時給単価や賃金テーブル、従業員ごとの給与設定に改定が必要な箇所がないかを確認します。
なお、今回答申を受けたのはすべての労働者に適用される「愛知県最低賃金」です。特定の産業の労働者に適用される「特定最低賃金」については、今後、同審議会で改めて審議が行われる予定です。該当する業種の会社は、この点もあわせて動向を確認しておく必要があります。
2026年8月5日時点で、愛知県最低賃金は1,195円への引き上げが答申された段階であり、10月1日の発効はまだ予定です。正式決定を待つ間に、月給制社員の時間換算や賃金規程・求人票の表記など、社内で確認できる部分から準備を進めておくことをおすすめします。
給与計算の見直しで判断に迷う点があれば、お気軽にご相談ください。
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